デプスインタビューは、消費者の行動理由や購入背景を知りたい場合に役立つ調査です。
本記事では、デプスインタビューの概要やメリット・デメリットについて解説します。
役立つシーンなどを具体例付きで紹介していますので、
「デプスインタビューとグループインタビューの違いが知りたい」
「どの方法で調査するか迷っている」
という方は、ぜひご参考ください。
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デプスインタビューとは、定性調査の手法の1つで「インタビュアーと対象者による1対1の面談式で実施する調査」です。
「デプス(depth)」とは「深さ」を意味します。つまり、対象者の意見を深く掘り下げて調査することです。
例えば、対象商品の購買行動について聞きたい場合には、「買おうと思ったきっかけ」「その行動をしたときの気持ちや考え」といった、心の動きを聞いていきます。
同じ商品購入者でも、購入理由は人によってさまざまです。対象商品を好きで使っている場合もあれば、特にこだわりなく使っていたり、不満があるけど他の商品を知らなかったりするケースもあります。
そこで、デプスインタビューにて購買行動を詳しく調査し、世に現れにくい消費者の本音を調査・分析していくのです。
本音を引き出しやすい環境を作るため、調査は、1人あたり1~1.5時間をかけます。また、調査対象者は偏りを防ぐために複数名(5~10名程度)を選定します。
デプスインタビューをおこなう目的は、じっくり時間をかけて消費者の行動を理解し、潜在的なニーズを知ることです。
人の感情や言葉を調査する定性調査は、数値(定量調査)だけではわからない、具体的な言葉やエピソードを得られます。
また、企業側では気付けない課題など、自社にとって貴重な意見を引き出す場合もあります。
このように、消費者が何を考え消費行動をしているのかを知ることは、商品・サービスの改善やマーケティング戦略に欠かせません。
デプスインタビューと混同してしまう言葉に「グループインタビュー」があります。ここで、両者の違いを確認しておきましょう。
項目 | デプスインタビュー | グループインタビュー |
---|---|---|
特徴 | 個別の意見を深く掘り下げられる | 短時間で大勢の意見を収集できる |
対象者数 | 1人 | 4~8人程度 |
時間 | 30分~90分程度 | 60~120分程度 |
効果的な活用シーン | 個別の意見や感情を深く理解したい場合 | 複数の人々の意見や反応を同時に把握したい場合 |
2つの大きな違いは、「インタビューで対話する対象者の人数」です。
グループインタビューは、複数の対象者がディスカッションする形式の調査です。
複数の対象者から短期間で多様な意見を収集できるため、新製品・試作品のレビューなど、限られた予算のなかで効率よく定性調査をしたい場合に適しています。
また、複数名に自由に発言してもらうことによって、お互いの発言に刺激され会話が盛り上がれば新しいアイデアや意見を引き出す期待もできます。
対して、デプスインタビューは、1対1で対象者に意見を聞いていく調査です。
対象者は他の人に惑わされず自由に発言ができるため、深層心理や購買行動についてより深く掘り下げた会話ができます。
また、1対1でおこなわれるため、お金や病気にまつわる話などセンシティブな情報の調査にも適しています。
グループインタビューについて、詳しくは以下の記事にて解説していますので、あわせてお読みください。
デプスインタビューをおこなうメリットを4つ解説します。
デプスインタビューのメリット
では、順に見ていきましょう。
最初にお伝えしたいデプスインタビューのメリットは、数字やデータではわからない消費者の気持ちを聞ける点です。
デプスインタビューでは、消費者が対象商品を認知し、購入に至るまでの考え方や感情の変化をじっくり掘り下げていきます。
例えば、「仕事で使うノートパソコン購入までのプロセス」を知りたい場合、以下のように掘り下げていくと購買までの行動が見えてきます。
仕事で使うノートパソコン購入までのプロセス
「対象商品を購入する際、どのような方法で情報収集したか?」
→「ビジネス ノートパソコン」でインターネット検索。
比較サイトがあったので、そこでスペックを確認し、希望価格に近いものを複数ピックアップした。
「複数候補があったなかで、なぜこの商品を選んだのか?」
→スペックがほぼ同じの他社製品と重さで比較し、一番軽量だった商品にあたりをつけた。
しかし、本当に性能が良いのか不安があったため、次に対象商品のSNSの口コミ・レビューを確認した。
→レビューで「持ち運びしやすく、出張の多いビジネスパーソンにおすすめ」というコメントが自分にぴったりと思い購入を決定。
この場合、比較サイトで紹介されているパソコンの中から、「軽量」かつ「出張が多いという自分のライフスタイルに適している」ポイントに魅力を感じたと読み取れます。
また、スペック比較だけでは不安で、口コミサイトやレビューのコメントに影響されたことも確認できます。
2つ目のメリットは、深掘りすることで本人も気付いていないような潜在的なニーズを発見できるという点です。
1人の対象者の購買行動や意思決定に関して深く掘り下げて聞いていくと、本人も意識していなかった願望や不満が垣間見えるときがあります。
消臭剤の商品購入までの動機を例に見ていきましょう。
消臭剤の購入動機
なぜ購入したか?→パッケージデザインに惹かれた
なぜ惹かれたか?→他と比べて値段が高いから購入を迷ったが、部屋に置きたいと思った
なぜ部屋に置きたいと思ったのか?→生活感のないおしゃれな部屋をキープしたい
このように、なぜを繰り返していくと「おしゃれな部屋を保ちたい」という潜在的なニーズを発見できます。
無意識の領域にある根本的なニーズを知るには、自社商品に関する意見を聞くだけでなく、それにまつわる思い出や体験談を広げて聞いていくのもポイントの1つです。
対象者を観察しつつ「なぜそれを必要としているのか」、「何に不満を抱いているのか」などのヒントを探っていきましょう。
デプスインタビューは、インタビュアーと対象者の1対1で調査するため、プライベートな内容や踏み込んだテーマでも比較的話してもらいやすい傾向にあります。
具体的にいうと下記のようなテーマです。
人には話しづらいデリケートな問題や建前に隠れた本音を聞き出したい場合には、1対1のデプスインタビューがおすすめです。
最後のメリットは、デプスインタビューは場所を問わないという点です。
インタビュー会場は、下記の3つのパターンのいずれかでおこなわれます。
特に近年増加しているのがオンラインでのインタビューです。
オンラインを使えば、対象者の住んでいるエリアを問わず実施でき、かつ、交通費用などかからないのでインタビューへの負担が減ります。
本音を聞き出すためにも、なるべく対象者がリラックスできる場所を選んで行いましょう。
次に、デプスインタビューのデメリットを3つの視点から解説します。
デプスインタビューのデメリット
それぞれ見ていきましょう。
デプスインタビューで得られた意見は普遍的なものではなく、「あくまでも一個人の意見である」ことを留意しておきましょう。
対象者が特定商品のヘビーユーザーだからといって、同じ属性から確実に好まれるとは限りません。
得られた結果は1人の意見を消費者を代表する意見ととらえず、統計的に分析・処理しましょう。
デプスインタビューは、他のインタビューよりも時間・コスト・手間がかかります。
仮に1人1時間として10人分をおこなうと、インタビュー時間だけで10時間です。
収集するサンプル数が多い場合は、1日2日では終わらないことを考慮して構成する必要があります。
調査には、余裕を持ったスケジュールを立てておきましょう。
デプスインタビューを成功させるには、人の本音を引き出すのが上手なインタビュアーを選定することが重要です。
インタビュアーの仕事は、「用意した質問を投げかけて答えてもらう」だけではありません。
対象者の本音を探るには、事前に決めていた質問をきっかけにし深掘りしていく必要があります。
例えば、購入理由を聞いた際に対象者から「ネットで調べてA商品を買おうとお店に行ったのに結局B商品を買った」というエピソードが出てきたとします。
当然ながら、このエピソードだけでは、本当の購入理由はわかりません。
そこでインタビュアーは、「なぜB商品購入に至ったのか」そのときの考えや気持ちを詳しく深掘りする必要があります。
つまり、インタビュアーには、本音を引き出すために対象者が答えやすいような雰囲気作りや状況に合わせた質問など、状況に合わせた臨機応変な対応が求められます。
もし、担当スタッフにインタビュアーの経験者がいない場合には、プロに任せるなどの検討も必要です。
ここで、デプスインタビューのやり方を解説します。デプスインタビューは、次の5つのステップで進めます。
デプスインタビューのやり方5ステップ
準備段階でまず必要なのは目的・ターゲットの設定です。ターゲットや質問内容の軸がぶれてしまい、引き出したい情報が得られなくなる可能性があります。
また、インタビューは事前準備した質問をもとにおこないますが、対象者の反応を見ながら、臨機応変に会話を広げていきます。
具体的なポイントなど詳細は以下の記事にて詳しく解説していますので、あわせてお読みください。
デプスインタビューは、消費行動における仮説を立てたり、コンセプトを作成する際に役立ちます。具体例としては以下4つのシーンが挙げられます。
WebサイトのUI改善
「Webサイトへのアクセスはあるのに滞在時間が伸びない」・「コンバージョンへつながらない」など、Webサイト改善にデプスインタビューが活用できます。
対象者に現状の不満点や欲しい機能などユーザーの立場からの意見を聞き、改善へ役立てます。
ペルソナ分析
マーケティング戦略に必要なペルソナ(自社商品のユーザー像)。設定する属性やライフスタイル・価値観などを判断する際のヒントとして、デプスインタビューを活用します。
カスタマージャーニーマップ作成時
カスタマージャーニーマップは、顧客の購買行動をつかむために作成します。ユーザーが商品を認知してから購入するまでの行動把握には、デプスインタビューが有効です。
デリケートなテーマを扱った商品のマーケティング
健康や病気、お金など他人には聞かれたくないプライベートなテーマを調査する際は、1対1のインタビューのほうがヒアリングしやすい傾向にあります。
上記の他にも、マーケティング戦略のための市場調査や顧客ニーズの把握、改善点の把握を含めた幅広いビジネスシーンで活用されています。
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対象者の行動理由や意見を深く掘り下げて聞き出すなら、デプスインタビューがおすすめです。
インタビュアーと1対1でじっくり話すことで、定量調査では得られない「消費者の本音」を引き出せます。
また、金融や医療系など複数人では話しにくいテーマのマーケティングにも適しています。
一方で、時間や労力がかかったり、インタビュアーのスキルが重要であったりする点も留意しなくてはなりません。
もし、初めてデプスインタビューを実施するなら、経験豊富なプロの調査会社に依頼することも検討しましょう。